「月見の会」なのに、今まで一度も月を見ながら開催できた事がありません
和田浦くじら食文化研究会おかみさんの会代表の櫟原八千代さん(鯨料理「ぴーまん」
女将)は観衆の笑いを誘う挨拶に始まった、第3回くじら料理と月見の会。
第1回は観衆の一人として、第2回はボランティアスタッフとして本会に参加している記者の記憶にも、イベントチラシに掲載されているような"青い月夜の浜辺"で開催した覚えはなかった。
雨が降った事こそないが、今年の予報は夕方から雨。
14時から始まった会場設営、関係者の皆さんも今にも雨粒が落ちてきそうな重い雲空を見上げながら、イベント開催に支障が無い事を願っていた。
一方、おかみさんの会に加盟している各店の女将さんや料理長は、ご来場頂いたお客様へ振る舞うための鯨料理の仕込みのため、朝8時半から和田地域福祉センター「やすらぎ」の調理室に入っていた。
今年度の記者のポジションは、南房総未来塾として出店する立場で参加した。
集合時間の14時少し前から早々と集合場所である南房総市役所和田支所へ集まっていた。
生まれも育ちも房州人というネイティブ房州人が比較的少なく、移り住んできたメンバーが多い南房総未来塾メンバー。
当然といえばそうであるが、定刻感覚に幅がある"房州時間"に慣れてしまうと、この時間前行動は気が引き締まる。
一般来場者の駐車場である和田支所から歩いて10分弱であろうか、イベント会場である和田浦海水浴場駐車場に辿り着く。
昔遊び道具や自分用のイス、ベーゴマが散乱しないための柵などを、集合場所を間違えてしまったJさんの軽トラに積んで、てくてくと歩いて向かった。
途中、南房総未来塾の委員長Yさんが、千葉国体の自転車ロードレース競技の補助ボランティアを終え、軽トラに手作りの竹馬を積んで合流した。
国道128号線から会場へ向かう坂を下ると、建物と松林の間から太平洋が見えてくる。
低気圧の影響で白波がたつ荒れた海が見えた、これまた気が引き締まるのも海沿いに暮らす房州人の性であろうか。
会場ではすでにテントや照明の準備が始まっていた。
和田商工会青年部の皆さんをはじめ、若いメンバーがチームワークを活かして会場設営をしていた。
地元の電器屋さんもスピーカーなど音響関係や、投光器や提灯などの照明関係、それに付随する配線関係と、1人でセッティングしている。
イベント開催前のこの風景からも、地域ににぎわいを!という空気が漂っていた。
私達南房総未来塾のブースは、今年初めて仲間入りしたこともあり会場の端ではあるが、少し広いスペースを振り分けて頂いていた。
軽トラから荷物を下ろし、ブース周りのセッティングを始める。
そんなに手の込んだ準備ではないので、提灯など会場全体の設営のお手伝いや、他のブースの荷物運びだしなど、手が足らなそうなところを見つけて、だんだんとイベントに溶け込んでいった。

我々が手伝える範囲が一段落すると、昔遊びのデモンストレーションを始めた。
竹馬・ベーゴマ・メンコ・けん玉など、子供から大人まで楽しめるような「ニッポンの昔遊び体験」ブースとして出店。
先月白浜で開催した国際交流イベントで予想以上に盛況だった昔遊び体験、11月の南房総市産業まつりの本番を前に、様々な場所でプレイベント的に始めて今回が2回目。
来月10日に南房総市白浜町のフローラルホールで開催される、白浜地域づくり協議会「きらり」主催の「きらりお楽しみ広場」にも出店することになっている。
そのリハーサルも兼ねて、「きらり」のメンバーも手伝いにきてくれた。
おヒゲがトレードマークのTさんお手製のベーゴマの盆。
複数のプレーヤーがこの盆の上でベーゴマを回し、火花散るの字のごとく盆の外にはじき飛ばす。
いわゆる相撲で言えば土俵みたいなものだ。
今回はベーゴマ名人が数人参加しているため、勝負をお見せすることができる。

委員長のYさんとJさんは竹馬担当、けん玉は日本けん玉協会公認のけん玉を5個用意した。
メンコも数十枚用意してあるが、これは実演できる人が見つからない。
そんな時に、白浜地域づくり支援員のKさんが紫色のブレーカーを着てやってきた。
あ、常に全力って書いてあら、A高甲子園出場記念のヤツだっぺ。
この少しばかり変わったオジ様が、実はメンコプレーヤーなのである。
パシッ、パシッと駐車場のアスファルトの上にメンコを打ちつける。
あのやってんだかい、こらぁ。(=何をやっているんですか、ここは)
おんだらにもやらしてくらいよ。(=私達もやらせてください)
自分のブース準備が一段落した出店団体の方々が、私達のブースへ遊びに来る。
年配男性に人気があったのは、ベーゴマだ。
子供の頃遊んだ経験がある人達が集まって、童心にかえって腕を競う。
同じ地域の仲間だから気心は知れているといえど、様々な世代が同じ遊びで一喜一憂するというのは昔遊びの真骨頂、まさに狙い通りである。

そんな熱気に水を差すように、雨がポツリポツリと落ちてきた。
もうすぐオープニングの16:30なのに。
今年は予報が予報だけにテントには天幕を張ってあったため、各ブース内はなんとか雨がしのげている。
未来塾ブースはというと...テントの恩恵を受けず(汗)
メンコは紙製、ベーゴマは鉄製、けん玉は木製、ということで竹馬を残して近くの倉庫へ道具を退避させる。
この先どうなることやら。
オープニングの時刻が近づくと、一時的に雨が止んだ。
ここぞとばかりに、本日のアトラクションの先頭を切るのは和田地域でおなじみの「松風太鼓」さんによる祭り囃子が始まった。
数分後、南房総市観光協会和田支部長の櫟原秋治さんより開会宣言。
続いて和田浦鯨食文化研究会おかみさんの会代表のぴーまんの女将さんからもご挨拶があった。
改めて祭り囃子が始まるところで再び雨が落ちてきた、今度は少し大粒だ。
記者は道具を退避した後、用意していたカッパを着た。
お囃子の皆さんはワゴンの後部扉を屋根代わりにして、太鼓を叩き続ける。
また、止む。
この隙に!と来場したお客様は鯨料理ブースに群がる。

お腹が空いてくる時間帯ということもあり、房州生活まだ日が浅い未来塾メンバーも鯨料理を嬉しそうに代わる代わる買ってくる。
美味しいよこれ、と言われると自分の事のように嬉しい、これは房州人というよりは和田人の性であろうか。

小学生をはじめ近所の子供達が会場に集まってきたようだ。
子供達に一番人気のブースはやはり商工会青年部さんの"ヨーヨー釣り"と"型抜き"だ。
その隣りという効果もあってか、昔遊び体験ブースにも子供達が遊びに来るようになった。
けん玉を手にとって遊ぶ子が多かった、というかけん玉技の一つ"もしかめ"をハイスピードでこなす女の子も現れた。
ベーゴマはさすがにマニアックというかマスターするまでに時間がかかるため、オヤジ達の社交場と化しているが予想外にメンコをやりたいという子も多かった。
その中で印象的だったのは、お母さんが私のブログをお読みになって来て下さったという親子連れのお客様がいらした事。
これはブロガー冥利に尽きる、そんなお話を伺ったその場では何だか恥ずかしくってあまりお話もできなかったが、この場を借りて改めて感謝感激雨あられ
本当にありがとうございました

祭り囃子が終わると、ダンススクール「EVOLUTION」さんによるHIP-HOPダンスの披露だ。
EVOLUTIONさんにも毎年お世話になっていて、見る度にダンスが上手くなっていく子供達が少し羨ましい。
我々が子供の頃には房州には無かった文化で、踊り好きの記者にとっては自然に体が動き出す...が酸欠で呼吸が辛くなる。
子供達の表現力というか可能性は無限だなあと、なんだか寂しく思うアラフォー男子。
そんな中、黄色いTシャツを来た櫟原八千代さんが駆け寄ってきた。
「餅投げやるから、アナウンスしてちょうだい」
キタ、マイクチャンス。
今年は昔遊び体験に専念しているということもあり、マイクでしゃべるのは本日初。
和田浦海水浴場駐車場には2階位の高さがある櫓が設置されている。
南房総地域だけではないだろうが、建築中の家が上棟の日(いわゆる建前)にお祝いの念と近隣への感謝の気持ちを込めて、屋根の上から餅を撒く風習がある。
それに倣って、本会主催者が櫓に昇って、日頃の感謝の気持ちを込めて丸餅とお菓子を撒くというのが今回初の試み。
餅投げの予告アナウンスをすると、子供も大人もご老人も櫓の周辺に集まってきた。

餅投げが始まると、何というか人間の本性を垣間見る状況が繰り広げられる。
上から餅を撒く方も、"撒く"というより"投げる"に近いくらいの速度で餅が降ってくる。
たしかに櫟原さんは「餅投げ」と言ってたな、なるほど。
あっという間に終了、みんな大切そうに餅を持って自分がいた場所に戻っていった。
次は和田民舞の会さんによる、お祭り踊りの披露だ。
霧雨降る中、和装したお姉様方が輪になり、地元の民謡などを踊る。
踊りを知っている子供達も一緒になって踊っていた...記者も踊れるのだが、今日は目立たぬように。
話によれば、和田民舞の会さんは9/25から始まった千葉国体の閉会式で"千葉みなと音頭"と"房州よいとこ"を踊るらしい。
なるほど、気合いがへえってるのはそのへんだろうか。
だんだんと雨が強くなる。
南房総未来塾の昔遊び体験ブースは早くも撤去、雨の中にぎわう会場を楽しむことにした。
お腹が満たされ、雨がひどくなってきたことも重なり、帰宅しようというお客様が増えてきた。
まだフィナーレの19:30まで1時間以上あるにもかかわらずこの状況ということで、鯨料理ブースもたくさん作った料理をできるだけお客様に持ち帰って頂くために値下げ断行。
セットでお安く販売することになり、留守番の家族へお土産として買って買える家族や、近所に配るんだと大量に買っていく方など、地元住民ならではのありがたさ。
未来塾チームもそろそろ解散。
主催者へ挨拶をして、私も一緒に帰ろうと思った矢先に、「カレー美味しいから食べていきな」と呼びとめる女将さんがいる。
そういえば、鯨料理あんも食ってねったな。
「今日のスタッフカレーはうんめぇど!」

スタッフカレー、いわゆる賄い料理。
売っている鯨カレーよりも美味しいらしいからスゴイ。(なんじゃそりゃ)
しかも鯨カツがのっているので、鯨カツカレーでござーい。

今日お手伝いに来て下さった千葉県立保健医療大学の女子大生さん5人と先生も美味しそうにスタッフカレーを食べていた。
そう、この料理はそんじょそこらのカレーとはわけが違う。
料理屋さんや民宿の女将さん達がスタッフのために作った、いわばプロがプロのために作ったカレー。
米は地元の新米、鯨は地元和田の海の恵み、そしてカレーを作ったのは地元の名物女将ときたら言うことナシ。
雨が降りしきる中、少し寂しくなった会場でフィナーレの言葉。
とにかく中止にならず、一通りイベントを終える事ができた。
これも地域の皆様のおかげであり、女将さん達の日頃のご努力の賜物といえよう。
止む気配を見せない雨の中、撤収作業が始まった。
折りたたみ式のテントのため、例年よりは楽に撤去ができた。
というか折りたたみ式が物珍しいのか、もう一回やろうという冗談も出るくらい。
撤去作業が進むにつれて雨も小ぶりになり、全体解散となった。
実はこのイベント、全体的な打合せ会議は一度きり。
それは毎年同じ地元団体が出店してくださり、また同じ地域に長年暮らし続けている仲間同士だからこそできる意思疎通と結束力なしには不可能である。
あうんの呼吸というか、直球の会話というか、地域ぐるみで作り上げるイベントならではの温かくて笑顔が絶えない雰囲気は、これからも受け継いでいきたい房州の宝といえよう。